ブックヨミヨミの読書感想ぶんぶん

雑食系の読書感想文!

マツモトトモ 『インヘルノ』をヨミヨミ。

こんにちは!

ブックヨミヨミです。

 

今日は、

マツモトトモ 著

『インヘルノ』

について書きます。

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「インヘルノ」とは、
ポルトガル語で地獄を表すそうです。
…地獄か…

 

漫画の感想文です。

姉LALAに連載されていましたが、

最終話を残して休刊になってしまうという

不幸な作品…(笑)

流石、この作品だけあるわ、と思ってました。

(持ってます。理由は以下読んで)

 

ハッキリ言って、こんなに感想を

書き難い漫画はないです。

…実の姉弟の恋愛話だからです…(大汗)

通常なら、書かないですよね。(汗、汗)

この煮え切らなさ…

 

でも、書きますよ。(キッパリ)

この作品を通して伝えたいテーマがあるわけです。

 

当作品のストーリーは以下です。

姉と弟で恋愛関係になってしまう。

紆余曲折あって、

最後は二人で生きていく道を選ぶ。

世間では認められないと十二分に理解しながら、

全てを受け止めて互いの手を握り合う。

 

正直、始めて読んだときは

あまりのアンモラルな内容に

たじろぎました。

少しの嫌悪感と、

なにより出版社と作者を心配しました。

「ダイジョブですか…今時こんな作品書いて…」

心臓に毛が生えているとしか思えない。

 

でも、この作品を最後まで読んだのは、

姉が弟に対して初めて気持ちを表す行動に出た時、

弟にひどく感情を揺さぶられたからです。

 

当初、

弟は姉に対する気持ちを絶対に知られてはいけない、

という思いと、溢れる恋心を持てあまして途方にくれます。

 

弟は苦しみ抜いて心を押し殺してきたのに、

姉はあっさりと禁忌の壁を超えてしまう。

 

弟が感じた戸惑いや怒り、圧倒的な喜びと深い罪悪感を

まるで自分事のように感じてしまったのです。

 

以前、恋愛話は苦手でした。

なんだか定型的な感じがして。

女性目線でも男性目線でも

限りなく都合がいいように描かれているようで。

 

恋愛は結婚というゴールが無い限り、

全て別れに至る。

そんな刹那的な関係を掘り下げて、

作品とするだなんて非生産的だ、と思ってました。

 

エンタメなら冒険ものやコメディ、ファンタジーなど

恋愛要素が極力ない物を好んでいました。

(今、私の恋愛偏差値の低さが暴露されています…)

 

しかし、年齢を重ねたせいでしょうか、

近年、恋愛物の良さがわかるようになってきました。

 

刹那的な関係だからこそ、

それに対比するような深い関わりの中で

輝く一瞬に価値があるんだなと。

 

この作品においては、

やはり設定を受け入れることにかなり抵抗がありました。

しかし、あくまでフィクションです。

フィクションの設定すら現実の倫理観でジャッジして

しまっては、想像性が欠如してると思いました。

 

架空の設定だからこそ、

読者も想像力豊かでいられます。

 

リアルではありえない状況に身を置き、

考え感じることができる。

それを受容することで、

今までにない新たな自分になっていく

と、思うのです。

 

想像力が不足している人間は、

寛容さと共感性が欠けているように思うのです。

そんな人は他人をすごく傷付けると思います。

 

アンモラルな二人の関係を、

時に主人公や周りの家族や友人になりながら、

切ない感情に共感し、ひたむきに愛する姿に

だんだんと許容していく。

 

決して単純なハッピーエンドに描かれていません。

手をつなぎながら業火の地獄を歩んで行く。

 

この作品は賛否両論あると思います。

 かる~く「おススメ」とは言い難い。

 

しかし、

敢えてわが身を渦中に投げ入れるが如く、

「インヘルノ」に落ちて(読んで)

見てはいかがでしょうか。

 

相手を求めて止まない苦しみ、

周りを傷つけ悲しませる罪悪感、

繋いだ手のあたたかさ、

その手が何時ほどけてしまうかわからない恐怖、

あなたは何を受け入れるのでしょうか。

 

PS:

以前、池袋のLALA原画展に行きました。

めったに見る事が無い美しい原画の数々に

感激しました。

失礼ながら、マツモト氏はとっても画力がある

というタイプの作家さんではないと思っていました。

しかし、この原画展で見たマツモト氏の作品は

際立って印象的でした。

絵とは、人の心を引き付けてナンボだ

と思ったのでした。